【荳ふくブログ】金曜ロードショー「君たちはどう生きるか」レビュー

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公開時に「メディア宣伝を一切しない」という異例の戦略で話題をさらったジブリ作品『君たちはどう生きるか(外部リンク)』。  

遂に地上波初放送ということで、楽しみにしていました。
この日は仕事と家の用事を早めに済ませ、お菓子を準備し笑、テレビの前で待機です。

■賛否が分かれる作品

君たちはどう生きるかのメインビジュアル
引用:Studio Ghibli

公開当初、この作品には様々な評価が寄せられました。  

「宮崎監督の集大成だ!」  
「考えさせられる素晴らしい作品!」  
「子どもが夢中で見ていた!」  

こうした絶賛の声がある一方で、  

「意味がわからない」  
「物語が破綻している」  

といった否定的な意見も見られました。  

引用:Studio Ghibli

私も視聴前は「凡人の私には絶対に理解できないのでは?」と身構えていました。
しかし、実際に観てみると「あれ?全然意味が分かるし、面白い!」と拍子抜けです。
むしろ、すぐに「もう一度観たい」と思った作品でした。  

とはいえ「意味がわからない」と言われるのも理解できます。
だって、自分も意味わからないと思ったところだらけだし笑

従来のジブリ作品は「見えるものをそのままセリフにする」というような特徴がありました。
例えば、虹が映るシーンでは登場人物が「虹が出てる!」と語るような具合です。これはジブリ作品の分かりやすさに繋がっていました。  

しかし、この作品ではそうした説明的な描写がほとんどありません。さらに、物語の展開が唐突に感じられたり、説明されずに終わる要素もあります。
「宮崎監督の自伝的作品だから」と言われたらそうなのかもしれません。ただ、それだけではない気がするんです。

■ジブリ育ちなら、分かるものがある?

君たちはどう生きるかのワラワラ達
引用:Studio Ghibli

私の家では幼い頃からジブリ映画がBGMのように流れていました。親は「とりあえずテレビをつけておけば暇つぶしになるだろう」といったスタンスだったのでしょう笑
気づけば、私はジブリの世界観を感覚的に理解するようになっていました。  

だからこそ『君たちはどう生きるか』の抽象的な表現もすんなり受け入れられたのかもしれません。
ジブリファンなら「分からないはずなのに感覚で理解できる」という不思議な体験をしたことがあるのではないでしょうか。  

一方で、ジブリ作品にあまり馴染みのない人が本作を観ると、理解に苦しむのは当然かもしれません。ジブリファンでも、どこに重点を置いて作品を観ているかでも変わると思います。
今作が感覚的に分かったと感じた私でさえだけ『ゲド戦記』だけは全く理解できないということもありましたし…笑
感性はそれぞれです。

■沈黙が語る感情——燃え盛る火のシーン

数ある名シーンの中でも、特に衝撃を受けたのは冒頭の「燃え盛る火」の場面でした。
ほとんどセリフはないのに、現実なのか幻想なのか分からないまま、感情があぶり出されるような表現。
その斬新さに驚きました。  

後にインタビューを読んで、このシーンには宮崎監督がほとんど関わっていなかったと知り、さらに驚きました。
だからこそ、新鮮に感じたのかもしれません。  

▶大平晋也氏による冒頭シーンについて

このシーンを手がけたのは大平晋也さんというアニメーターさんで、宮崎監督とは異なる方向性ながらも、天才的なセンスを感じました。
「後継者が育たない」と言われるジブリですが、彼のような才能が活躍するなら未来は明るいのでは——と思ったものの、彼はジブリのスタッフではなく、フリーのアニメーターさんだそうです。
少し残念?な気持ちになりました。
ですが、このインタビューを読んで、期待する気持ちも持ちました。

▶制作スタッフによるインタビュー

■父のジャケットが象徴するものは何か?

「君たちはどう生きるか」主人公眞人の義母の夏子
引用:Studio Ghibli

作品全体には、今までジブリ作品とは違う生々しさが漂っている印象を受けました。
分かりやすいのは、眞人が夏子を紹介された場面。彼女はすでに妊婦であり、父との関係が描かれます。  

しかし、私がもっとも気になったのは、夏子が体調を崩してベッドで休んでいる場面でした。部屋の中で目立つように父のジャケットがかかっているカットがあるのです。  

このジャケットが何を意味しているのか——。
これは私の想像ですが、宮崎監督が幼少期に似たような場面を経験したのではないか、と感じました。直接的な描写以上に「ジャケット」という語らない物質により現実が突きつけられることで、眞人の心情をより深くえぐるのではないでしょうか。  

■君たちはどう観るのか?

「君たちはどう生きるか」主人公眞人が机に向かう様子
引用:Studio Ghibli

まだまだ綴りたいことはありますが、ネタバレせずに書く自信がないので、この辺にしておきます笑

この映画は『君たちはどう生きるか』と問いかけるだけでなく「君たちはどう観るのか」と視聴者に突きつける作品だったように思います。  

宮崎監督の自伝的作品と評されていますが、それだけでは終わらないと思えるところが本作の魅力でもあるのではないでしょうか。  

何をどう受け止めるかで、作品の印象は大きく変わります。だからこそ、もう一度じっくり観たくなる——そんな映画でした。  

次週の『紅の豚』も楽しみですが、今夜はもう一度、この映画の余韻に浸りたいです。  


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